実際に私の周りでも良い後継者候補がいないということで事業を畳んだ人もいます。
今回は事業を人に引き継ぐ時に起こり得る問題について考えて見たいと思います。
「財を残すは下、事業を遺すは中、人を遺すは上なり」
という言葉があります。
出所を調べてみたところ、後藤新平の言葉という説と、中国中国唐代の
大詩人・白楽天(はくらくてん)の、四十三代目にあたる白彦基(はくひこき)が、
富山県高岡市在住の四津井清一氏に贈った言葉という説があります。
この言葉自体は何かで読んで知っていたのですが、実はこの言葉には続きが
あるそうです。
「されど、財なくんば事業保ち難く、事業なくんば人育ち難し」
人を育てることが第一であるが財産がなければ事業を継続することは難しく、
事業がなければ人を育てることも難しいという意味のようです。
人材を育成するためには、財産も事業も共に必要ということでしょうか。
ここまでくると、事業がどうのこうのというレベルを超えて、人間は一体どんな目的で生まれてきて死んでいくのかという深い話になってきてしまいそうです。
事業承継の主なポイント
①後継者の選定
②後継者の教育
③事業の強化
こんな感じになりそうです。
法律や税金の問題については、経営承継円滑化法や色々な助成金、補助金など、
知っておくと有利なものがたくさんあるようです。
このあたりの情報はの中小企業庁ホームページに詳しく載っていますので
参考にしてください。
「事業承継マニュアル」なんていうものまで丁寧に作って配布してくれています。
身近な税理士や弁護士に聞くともっと詳しく教えてもらえると思います。
さて、それ以外に①②③のポイントについて深く掘り下げていきたいと思います。
①後継者の選定
このうち、もっとも難しいのは①の後継者の選定のようです。
そもそも後継者がいない、という事業体が多く、年間約29万社の廃業数のうち
「後継者がいない」という理由のものがおよそ7万社にのぼります。
大体4分の1ですね。全体の傾向としては、20年ほど前までは全体の9割以上
が親族への継承だったものが、ここ10年間では6割程まで減少し、事業自体を
他者に譲渡するM&Aが増加傾向のようです。
若い世代の人口が減ってきていること、製造業界自体が衰退、というよりは
二極化が進んでおり、特に中小企業にとって後継者不足ということは年々深刻化
しています。
ただでさえ会社内の普通の人員の確保にすら困っている状況で、後継者という
難しいポジションについてもらえるような人を探すことは、もっと難しいでしょう。
となると普通の中小企業にとってはどうしても親族から探すことになります。
こればっかりはあなたご自身で見つけてもらうより他に方法はありません。
親族以外で探すのであればM&Aのように、事業自体を売却するような方法が
現実的だと思われます。
②後継者の教育
後継者が見つかったとして、どうやって後継者を教育する?というのも気になる
ところです。
実際、経営者の息子が入社したものの、いざ経営を任せようとした段階になると、
「業績が良くないから」
とか「現場のことしか知らないので経営ができるかどうか不安」
ということで頓挫するケースが多くあるようです。
いざ経営を引き継ぐタイミングでそういうことにならないようにするために、
後継者を教育する方法にはこんなものがあります。
- 社内での実務の研修
- 違う会社での修行
- 外部での研修(勉強会など)
社内での実務の研修、これは遅かれ早かれその会社の経営者になるのであれば
当然誰もがすることになります。
その期間については最低5年がいいとか、10年はかかるとかいろんな説がありますが、
後継者側の準備ができていれば1年でも2年でもいいんじゃないかなと思います。
違う会社での修行、これは別に製造業でなくても古くから行われてきました。
丁稚奉公なんていう制度もこれに似た制度ですね。
あの巨大企業の松下幸之助や本田宗一郎、最近ではトヨタの章男さんなども、
一度は他所の窯の飯を食べています。
業界のことを客観的に分析できるようになる、とか厳しく鍛えてもらえるとか
色々とメリットがあるようですが、総合すると「視野が広がる」からだそうです。
経営を引き継ぐ会社ではできない業務もすることによって色んなものの見方が
できるようになったり、人間関係も勉強できるのでしょう。
次期社長だから、なんて変な気の使われ方をすることもなく、時には厳しく
鍛えてももらえるのも大切な人生勉強かもしれません。
外部での研修、これは色んなところで行われています。
事業承継を目的としたものだけでもたくさんありますが、それ以外にも経営者向け
の勉強会やセミナーが多いです。
経営について勉強できることはもちろん、そこで出会う現役や将来の経営者との
人脈を作っておくことはとても大切です。
実際に経営のピンチを救ってもらうことだってあるかもしれません。
③事業の強化
最後に事業の強化、について。
これは事業承継についてもっとも大切なものです。
結局事業が儲かっていれば、将来性があれば、楽しそうであれば後継者候補は
出てくるわけで、後継者を育てる予算も潤沢にとれます。
そうです、結局ここなんです。
そんなことわかっとるわ!とお叱りを受けるかもしれない内容で非常に恐縮です。
じゃどうやって事業を強化するか?といえば、もうマーケティングしかないわけ
ですね。社長の仕事はもうこれだけでいいんじゃないかとすら思うわけです。
既存の業界、顧客、製品の強化と、新しい業界や新しいお客さん、新しい商品の
獲得をし続けた会社が結局存続、発展していくんですね。
そのためにホームページもあるし、社内での打ち合わせもあるし、食事会や
お中元お歳暮、親睦ゴルフだってこのマーケティングのためにあると思えば、
社長の仕事なんて結構シンプルだと思いませんか?
まとめ
事業承継をうまくするために大事なことは、事業を強化すること。(やや強引なまとめ)