マニュアル導入が成功するために必要なこと

マニュアル作りは、事業のムダ・ムリ・ムラを最短でなくす方法です。
マニュアルを作らないことは、日々ノウハウを得ながら、
穴の開いたバケツに水をためようとしている状態です。

事業が効率化しているはずが、その逆になっていることもしばしば。
そこでマニュアルを作るという決意を最高の結果に結びつけるために、
マニュアル作りの目的と手順の概要をお伝えしたいと思います。

過去数多くの企業がマニュアル作りに挑戦し、
形だけのマニュアル運用になってしまった事例があり、
一方で成功した事例もきちんとあります。

その中でマニュアル運用を成功に導くために必要なことはなにか、
目的と、持っておくべきイメージ、手順を手短にお伝えします。

 

マニュアルを運用する目的

 

最終的にマニュアルを運用する目的、
これはたった一つ「事業の発展のため」です。

業務を簡単にするため、だとか、会社の体裁を整えるため、
など色々な理由が思い浮かびますが、最終的には事業の発展のため、
もっと具体的に言うと収益を改善すること、に行きつきます。

極端にいうと、収益が改善することに結び付かないのであれば、
マニュアルを運用するべきではありません。
マニュアルの運用には、特に初期には時間も費用もかかります。

 

 

マニュアル運用でハズせない5つの手順

 

マニュアルを導入することによって、そうでない場合と比べて
業務が効率化するところ、つまり上の図の黄色のポイントまで頑張れば、
後はマニュアル運用の旨味を味わうことができるのですが、
多くの場面でここまで到達することができません。

間違った方法でマニュアル運用を開始するため、
この黄色のポイントに到達するまで思ったより費用も手間もかかるからです。

そこで、この黄色のポイントを超え、
良いマニュアル運用をするための手順5つを示します。

 

1. まずはその作業が必要かどうかを考える

 

マニュアル作成を全社で推し進めていこうとすると、
まずは日常業務から取り組むことになります。
そうすると本来必要でない作業もマニュアル化してしまう
という間違いをしてしまうことがあります。

まずは本当にその業務が必要か(目的である収益の改善に
最終的につながることがどうか)をじっくり考え、
必要でないことはしないという決断をする必要があります。

 

2. その作業は自動化できないかを考える

 

次にその作業は、なにかの製品、サービス、ソフトウェアなどで
自動化できないかと考えます。

ウェブ上で探す、人に聞いてみるなどして探します。
こういったものは日進月歩で色々なものが開発され市場に出されています。
特にモノづくりの経営者は、すぐに人を雇って対応しがちですが、
最初にそれ以外のアウトソースを考えるべきです。

3. 作業をシンプルする方法を考える

 

長年同じ作業をしていると、知らず知らずのうちに
二重の手間になっていたり、最初から不必要な作業が
加えられていることがよくあります。

とはいえ、最初から完璧なマニュアルは作れません。
まずはマニュアルを運用していき、徐々に効率の良い、
シンプルでいて必要なことは全て載っているマニュアルを目指しましょう。

4. マニュアルを作る

 

以前は文字や図だけのものが多かったですが、
マニュアルは仕事の効率化の究極です。

画像や動画も使って、どの作業者が使っても一定の品質を
保てるよう柔軟に考えましょう。

同じ作業でも文字でダラダラ説明するより、
動画でその作業を見せた方が圧倒的にわかりやすいことはよくあります。

5. マニュアルを改善し続ける

 

ここが、初めてマニュアルを導入する会社がつまづくところです。
一度労力をかけて作り、新たなマニュアルを作ることに
目が行きがちですが、マニュアルを本当に効果的にするためには、
マニュアルを常に改善する工程が不可欠です。

改善が必要なさそうなものでも半年、一年に一回は見直すようにしましょう。

 

 

マニュアルを効果的なものにする2つのコツ

 

マニュアルを効果的にするため、また作りやすくするためには、
その背景情報、理念が必要です。
そうでないとマニュアルを作る人によってバラつきが出てしまい、
それぞれで整合性が取れなくなってしまいます。

そこで全体の大まかなルールとなるような背景情報、
理念を決めておきましょう。

具体的には、

優先順位の基準を示す
やることと、やらないことを決める

この二つです。

① 優先順位の基準を示す

例えば私の顧客で実際にあった例が、

「お客様は神様です」というようなことを経営者が言っている。
一方で「このお客さんはあまり相手にしなくていい」みたいなことも言っている。

従業員は混乱します。
どのお客様が神様で、どのお客さんが神様じゃないのか、
従業員はわかりません。

また何を基準にそう言っているのかもわかりません。
これでは不信感が募ることはもちろん、経営者自身も
信用されなくなってしまい、従業員も仕事に集中しづらくなります。

お客さんに優先順位をつけることは構いませんが(むしろ推奨しますが)、
その基準は示しておくべきです。

自社の仕事を常に適切に評価してくれる顧客を優先する
支払い条件の良い顧客を優先する
単純に好きな顧客を優先する
過去に助けてくれた顧客を優先する

など色々あるでしょうが、基準を示しておきましょう。

実際に何らかの差をつけるつけないは場面によるでしょうが、
従業員だけでなく、経営者も考え方が明確になり、
より良い施策を実行しやすくなります。

② やることと、やらないことを決める

やることとやらないことを決める、についての実例は以下のようなものです。
これは事業を展開する理念に基づくので、それぞれの個性が反映されます。

例えば私の場合でいうと、

基本的には初めてお会いするような方に必要がない場合携帯電話番号を教えない、
午前中は携帯電話を見ない、インターネットにつながない(Eメールも見ない)、

など一見顧客の不都合になるようなルールがあります。

しかし、これは最終的に顧客にもたらす価値を最大限にするための
ルールと自負しています。
顧客の価値を高めるために集中すべき時間を確保するという
理念に基づくもので、実際にその効果も体感しています。

瞬間的に反応することは良いことである場面もありますが、
ほとんどは不必要で、すぐ対応したものの、相手側の都合で
また対応が変わり、結果的に余計な仕事が増えた、
ということは誰しも経験していると思います。

これは私の理念なので真似する必要はありませんが、
自社の限られた時間を有効に使うためには

「やらないことを決める」

ことが不可欠です。

一旦「社内の人への相談は午後1時から2時までの間に限る」などすれば、
皆それに合わせて仕事をしますし、邪魔が入らず仕事の集中度、
完成度は上がります。
不思議と相談内容も高度なものへと変化します。

 

やらないことを決めたら次はやることを決めます。
顧客からのクレームはすぐ誰々に連絡する、など
すべてのルールを無視してすることも決めておく必要があります。

どういう種類のクレームに対しては即反応するべきなのか、
など細かいことはマニュアルを運用しながらでOKです。

災害対応などもそうですが、想定外のことは常に起こり得ます。
そういうルールを決めておくと冷静な対応ができ、
自社の能力をより良く発揮できる体制にしやすくなります。

 

最後に

以上がマニュアルを運用していくにあたり、
ご理解(覚悟?)していただきたい内容です。
逆にいうと、これに対して異論がある場合、
マニュアルを導入するべきではないとすら考えます。
時間・費用のムダに終わるからです。

マニュアル導入は事業にとって不可欠で、
最終的にすべての社員・経営者を幸せにするものですが、
中途半端に導入すると邪魔にしかなりません。

このあたりを良く考え、シミュレーションしていただき、
検討していただければと思います。

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